「今春の高校入試の概況(3)」 (私立・国立編)

応募状況

 私立高校の推薦入試は、偏差値45~49の層と60~64の層は前年度に比べて受験者が増えましたが、その他の層は全て減っており、全体としては570人減となっています。一般入試ではわずかに増えた学力層もあったものの、全体では2400人程度の減少でした。
 2023年12月に授業料の実質無償化について、所得の制限をなくすことが発表されました。東京都では、生徒と保護者が都内在住であることを条件に、東京都独自の助成制度「私立高等学校等授業料軽減助成金」が設けられています。これまでは所得制限があり、保護者の年収目安910万円未満の世帯までが授業料の実質無償化の対象となっていましたが、それ以上の世帯についても対象とするということです。それにもかかわらず私立受験の推薦・一般の応募が減った(受験生の私立志向が高まらなかった)のは、以下の要因が考えられます。

 ・制限があった世帯はもともと比較的自由な選択ができていた。(助成金制度の拡充がただちに新たな受験生の増加とはならなかった)
 ・2022年から続く円安、物価高の影響。助成金制度が充実したとはいえ、全ての学費が無償化されたわけではない。(あくまで授業料であり、もちろんそれも大きな軽減とはなるが、入学金、制服、修学旅行、部活動費等はかかる)。助成金制度拡充以前と比べれば私立志向は継続していると言えるものの、経済的不安感は拭えないと思われる。
 ・今年度の受験生は小学6年生時、2020年春一斉休校を経験し、コロナ禍での中学入学となった生徒たちで、都立高入試でも受験者全体に安全志向が働いた様子がうかがえる。また、都立以外の通信制・定時制に流れていることも大きな要因である。

各校の選抜状況

①国立大附属
 筑波大学附属駒場は3年連続で応募者減で、実質倍率は3倍を切りました。同じ世田谷区の東京学芸大学附属への流れもあったかと思われます。お茶の水女子大学附属は70人の応募者減でしたが、附属中学からの入学者(例年約60人)がいるので非常に難しい入試です。東京学芸大学附属は3年連続の応募者増です。同校が2019年度に導入した「入学確約書」への受験生の対応が定まりつつあるのではないかと想像されます。東工大科学技術は推薦と一般ともに受験者が年々増加しています。2026年4月の大岡山キャンパスへの移転・新校舎建設に向けたスケジュールが改めて示されたことが安心材料となったかもしれません。東京医科歯科大学との統合後、「東京科学大学附属科学技術高等学校」に改称予定です。

②私立難関進学校および大学附属校
 開成は今年度は応募者数は減りましたが実質倍率が3倍を超えました。5科型入試を導入して4年目の巣鴨は前年度が非常に厳しい入試だったためか応募者数は約100人減少しています。開成、巣鴨ともに合格点が徐々に上がってきており、学校側が求めるレベルが高くなってきていると考えられます。
 2024年4月から、宝仙学園共学部が順天堂大学の系属校になったほか、2026年4月からは日本学園が明治大学と系列校化、順天が北里大学の附属校になります。高校の3年間で学力が伸びればもっと上のレベルの大学に進学できるかもしれませんが、その可能性より併設大学進学の確実性を重視する受験生が多いのではないかと思われます。

③私立進学校
 2024年4月から蒲田女子が女子校から共学に改編、校名を「羽田国際」に変更したうえ特別進学・総合進学としてコース改編(幼児教育は女子のみ募集)しました。また、自由学園は男女別学から共学に改編、淑徳SCは校名を「小石川淑徳学園」としデジタル教養コースを新設しました。
 東洋は前年度に特進の併願優遇を復活させたことで受験者数が大幅に増加しました。今年度はさらに各コースの内申基準を下げたので、推薦・一般ともに約30%の増加となりました。桜丘は前年度に続き、さらに定員を50人減らして130人としましたが、受験者数は前年度の倍以上になりました。毎年変更点が多いため、次年度も注意が必要です。岩倉は推薦・一般ともに減少で前年度とは対照的な結果になりました。コースの再編をした共栄学園等に流れた可能性もあります。関東第一は今年度進学Gコースの内申基準が1上がった影響か、267人の減少となりました。SDH昭和第一は進学・特進の両コースにおいて実質倍率が3倍を超えており、非常に厳しい入試だったことが分かります。